2017年8月23日水曜日

合同会社の注意点



労務の出資・信用出資の禁止(株式会社も禁止)


現物出資において,検査役の調査が不要。


金銭出資について,金融機関などの払込取扱機関への払い込みでなくてもよい。よって,出資に係る払込みを証する書面は,代表社員作成の出資金の領収書でもよい。


出資者は,出資の義務を合同会社に対する金銭債権をもって相殺できる。


配当をする場合において,純資産額による制限がない(株式会社は純資産額が300万円を下回る場合には配当をすることができない。)。


出資財産の価額の2分の1を資本金としなくてもよい(出資財産の価額の全額を資本金としないことができる。)。


設立登記の登録免許税は,最低6万円となる(株式会社の設立登記の登録免許税は最低15万円となる)。


設立登記の定款について,公証人の認証を受ける必要がない(株式会社の定款は公証人の認証費用5万円が必要になる。)。


持分を譲渡する場合は,原則として他の社員の全員の承諾が必要となる。譲渡の承諾が得られない場合において,合同会社または特定人が買い取ってくれる制度はない。(株式会社の場合は,株式会社または指定買取人が株式を買い取る制度がある。)。
社員は,やむを得ない事由がある場合には,いつでも退社することができる。


社員が死亡した場合は,法定退社事由とされている。ただし,定款の定めにより相続人が持分を承継することはできる。
定款の定めにより相続人が持分を承継し,社員となる場合において,定款に別段の定めがなく,社員が業務執行社員(及び代表社員)となる場合は,加入の登記をする必要がある。
定款に例えば,
「相続が発生した場合は,相続人が承継加入する」と定めた場合は,相続人全員が,法定相続分に応じて社員である地位を取得する。一部の相続人だけが加入を希望する場合は,他の相続人は相続放棄をするか,または,いったん相続人全員が承継加入した後,加入を希望する相続人に持分を譲渡するかの方法による。なお,共同相続人全員の遺産分割協議書によって,一部の相続人だけが社員の地位を承継したとする相続承継加入の登記は受理されない。
「相続が発生した場合は,相続人が欲したときには承継加入することができる」と定めた場合は。相続人ごとの任意の意思表示によって承継加入することができる。
「他の社員の同意を条件として承継加入することができる」と定めることもできる。
「特定の者(例えば長男)が承継加入する」と定めることもできる。
「業務執行社員が死亡した場合は,その一般承継人が当該業務執行社員に代わって業務執行社員となる」と定めることもできる。
社員が変動する場合は,必ず定款変更を伴う(社員の氏名又は名称及び住所,出資の目的及びその価格又は評価の標準は定款の絶対的記載事項なので)。
なお,定款に相続や合併等の承継に関する定めがある場合は,持分を承継した時(社員の死亡日や合併の効力発生日)に,当該承継人係る定款の変更をしたとみなされるので,登記の際には,定款変更の同意書などは不要となる。
任意退社や法定退社の場合は,定款を変更したとみなされる。
決算公告が不要。


定款自治の範囲が株式会社よりも広範となっている。


業務執行社員及び代表社員に法定の任期がないため,設立登記後の登記申請は原則として不要となるため,会社維持費用が安い。


出資者には,定款に別段の定めがない限り,出資金額に関係なく平等の発言権がある。


準備金制度がない。よって,社員資本は,資本金,資本剰余金・利益剰余金に区分される。
退社に伴う払戻額が,剰余金額を超えない場合は,資本金の額は減少しない。この場合,払戻額のうち,退社社員に係る剰余金を超える部分は,退社社員以外に帰属していた資本剰余金及び利益剰余金が充当され,退社社員に係る資本金は,残存社員の資本金に移ることになる。
資本金の額が減少する場合は,債権者保護手続が必要になる。


合同会社は,自己の持分を取得することができない。


業務執行社員は法人税法上の役員となる。よって,給与は,全額が役員給与となり,定期同額給与・事前確定届出給与などでなければ,損金不算入となる。


監査役を設置することはできるが,登記事項ではない。


法人も社員となることができる。法人が業務執行社員となる場合は,自然人たる職務執行者を選任する必要がある。
定款の定めに基づく社員の互選によって代表社員を定めた場合は,就任承諾書が必要。
法人が代表社員となる場合の就任承諾書は,当該法人の職務執行者が合同会社に宛てて提出する。
法人が社員である場合,業務執行社員としての意思表示は職務執行者がおこない,社員としての意思表示は法人の代表者がおこなう。
総社員の同意書などの添付書面に押印すべき印鑑について制限はない。
就任承諾書には印鑑証明書を添付する必要がない。
印鑑の届出に係る代表社員の実印及び印鑑証明書は必要。
職務執行者と法人社員の代表者が一致する場合,印鑑届書には,職務執行者として法人の届出印を押印する。しかし,一致しない場合,届出の印鑑が,職務執行者の印鑑に相違ない旨の法人社員の代表者作成に係る保証書(法人の届出印を押印)を,印鑑届書と同時に提出する。この場合の職務執行者の印鑑は,認め印でよい(よって,職務執行者個人の印鑑証明書は不要)。
株式会社における株主リストのような書面,本人確認証明書,代表者の辞任の添付書面は不要。
破産手続開始の決定,合併以外の事由による解散及び後見開始の審判を受けたことについては,定款で法定退社事由から除外することができる。
退社における持分の払戻額(払戻額の算定方法)を定款で定めておくことができる。


*月報司法書士2017年6月号を参照

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